エスケープバルブ Eascape Valve
時計内部に侵入したヘリウムガスが浮上・減圧時に時計を内部から破壊してしまうのを防ぐために設けられた、時計内部にたまったヘリウムガスを排出するためのバルブです。
職業ダイバーが飽和潜水深度に潜る際は、ダイビングベル(潜水鐘)という予備タンクも一杯積み込んだカプセルに入り、加圧しながら沈んで行きます。 そしてそこからタンクを背負って潜ったり、ダイビングベルへ戻ったりを繰り返します。そして作業が終わった後は加圧したまま浮上させるのですが、ここでじわじわと大気圧まで減圧して行くのですね。
大気を加圧する際に、大気に含まれている窒素、酸素や二酸化炭素の量を増やしてしまうと意識障害や健康障害を起こす可能性がありますので、不活性ガスであるヘリウムガスを加えます。このヘリウムガスは、分子が小さいのでパッキンや昔のプレキシ風防を透過してしまい、時計の内部にヘリウムガスが加圧に応じて入り込み続けるのです。
時計は外圧に強い設計ですから加圧中は頑張りがききますが、作業終了後の減圧時には内部からの膨張圧には弱いので、昔は破裂と言うよりは風防が弾け飛んだりするトラブルが頻発したそうです。
『減圧中もヘリウムがパッキンや風防を透過するのでは?』と当然考えますが、ヘリウムガスが透過して逃げる度合いよりも減圧の速度が早いので(人体に害のない範囲で最大限早く減圧しますから)、どうしても時計が内側から膨らむのです。この内部からの膨張を解決したのがヘリウムガス・エスケープバルブですね。
ロレックスではシードゥエラーやディープシー、オメガであればシーマスターやプラネットーシャンに搭載されています。
この記事はMisawa様からの寄稿を参考にさせて頂きました。ありがとうございました。
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