チュードル クロノタイムの歴史
前回はチュードルのクロノグラフについて解説させていただきました。クロノタイムについてはもっと詳しく伝えたかったのですが、微に入り細にわたって書いていると収集が付かなくなると判断しましたので、クロノタイムだけに限定して書きたいと思います。
クロノタイムの製造期間についてですが、私は2005年頃までと考えます。チュードルの2005年版カタログにクロノタイムが掲載されていました。製造と販売は違うという考えもありますが、ロレックス社では製造を中止するとカタログ落ちはしますが、在庫があるうちは販売されます。これと同じだと仮定してクロノタイムの製造は2005年頃まであったと私の説を変更します。チュードルは店頭に並べてもすぐには売れないので、シリアルから製造次期を判断するのが難しい特徴があります。クロノタイムはH6xxxxまでシリアルが確認されていますが、H6xxxxがいつごろの製造なのかを特定するのは困難です。2002年まではだいたい分かっているのですが、H4,H5,H6がいつ頃までなのかが分かりません。
※チュードルマニアさん情報提供ありがとうございました。
ちなみにギャランティの日付についてですが、デイトナなどショーケースに並べれば即売れてしまうモデルとは違って、クロノタイムの最終モデルなどは店頭に並べてもしばらくは売れない状態でした。ギャランティの日付は販売された日付を記入しますので当てになりません。ですからやはりシリアルから予測するしかないというのが私の判断です。
クロノタイムは大きく分けて4期に分かれます。REF番で言うと1期:94xx系、2期:791xx系、3期:792xx系、4期:792xxP系の4つですね。順番に変更点を述べると混乱してしまいますので箇所ごとに変遷をみて行く形とします。
写真提供:skywave氏、JFKコレクション
■ケースについて
クロノタイムからムーブメントにバルジュー7750を導入しまして自動巻化を果たしました。7mmにも及ぶムーブメントを収めるケースですから非常に厚いものとなります。クロノタイム初期のものはケース側面が切り立った形状で直線的な印象のケース、いわゆるカマボコケース(BIG-BLOCK)を採用しました。このケースは792xx系が登場する1995年まで使われていましたが、792xx系では曲線を生かしたケース形状に変更されました。このケースまでラグ正面の仕上げはサテン仕上げでしたが、さらにその後、1999年に登場した792xxP系からはポリッシュ仕上げに変更されました。
■風防・ガラスについて
初期から791xxまではプレキシガラスを採用。ガラスと言ってもアクリル樹脂のことで傷も付き易く防水性を高めることも出来ませんでした。プレキシガラスのときは防水性能も50mでしたが、792xxからサファイアクリスタルが採用され100m防水を達成できました。
■リューズとケースバック(裏ブタ)について
チュードルの外装パーツはロレックスが作っていましたので当然王冠マークがついたパーツを使用しておりましたが、1996年にチュードルはロレックスから生産を分離したためチュードルマーク入りのパーツに順次変わっていきました。リューズから王冠マークが消え盾マークへ変更されたのもこの時期です。ちなみに裏蓋についてはロゴが変更されただけでなく、刻印されている文字も変更されています。”ORIGINAL OYSTER CASE BY ROLEX GENEVA”から”TUDOR PRINCE GENEVA”へと変わりました。
■ブレスレットについて
ブレスレットについては少し変更のタイミングが早いんですね。ブレスレットは初期の段階から王冠マークの3連ブレス+シングルロックでしたが、791xxになると盾マーク3連+シングルロックへと移りました。
1995年に791xxから792xxへの変更時にパーツの製造がロレックスから分離されたため、ブレスレットとフラッシュフィットの製造もチュードルが行うことになりました。791xxから792xxのケース形状の変更を受けて、盾マーク3連+シングルロックというスタイルは変りませんでしたが、ブレスレットとFFのREF番が変更となりました。
その後98年頃からは盾マークの5連ブレス+シングルロックになり、変更年は特定できておりませんがモデル最終期には盾マーク5連+ダブルロックに変更されています。この変遷については分かりづらいと思いますので表にしておきます。
さらにクロノタイム後継モデルのクロノチックでは5連ブレス+バタフライクラスプへと変わっていきました。また余談ですがタイガーウッズモデルが登場した98年から革ストラップ+盾マークのDバックルの設定が追加されています。
これらの変遷のタイミングは結構アバウトです。例えば、タイガーモデル登場時に盾3連から盾5連に変わったと述べましたが、実際には盾3連のタイガーモデルも確認されています。在庫の問題かわかりませんが、仕様変更の過渡期には仕様がダブっていることがあるので注意が必要です。
年代 | 出来事 | ブレス | クラスプ | ブレスREF(FF) | |
1976年 | 94xx系登場 | 3連 | 王冠 | シングルロック | 7836(380) |
1989年頃? | 791xx系登場 | 3連 | 盾 | シングルロック | 78360(589) |
1995年 | 792xx系登場 | 3連 | 盾 | シングルロック | 78400(605) |
1998年頃? | タイガーモデル登場 | 5連 | 盾 | シングルロック | 62490(632) |
2000年頃? | モデル最終期 | 5連 | 盾 | ダブルロック | 62590(632P) |
■黒いベゼルの素材について
初期はプラスチックベゼルといわれていますが、厳密にはベイクライトという硬化プラスチックです。792xxからはアルミニウムに変更されタキメーターもプリントに変更されました。
■ダイアルについて
初期は”TUDOR”の文字の下に”CHRONO TIME”と書かれていただけでしたが、登場から2年後にモンテカルロダイアルが登場した際、モデル名の表記なしとなり6時のインダイアル周りに”AUTOMATIC-CHRONO TIME”と書かれました。その後”OYSTER DATE”とかかれたダイアルも登場ししばらくは混在したようです。その後タイガーダイアル頃から”PRINCE DATE”となりました。現在日本ロレックスにダイアル変更を申し出ると、OYSTER表記のモデルでもPRINCE表示に変えられてしまいますので注意が必要ですね。OYSTER表記やそれ以前のダイアルはもうストックがないのでしょう。
同じダイアルについてですが、モンテカルロと呼ばれたダイアルはクロノタイム登場時には設定がありませんでした。登場から2年後の'78年に追加されまして791xx導入時には廃止されてしまいました。約11年間しか販売されなかったことと、実にチュードルらしいダイアルであることから高額で取引されています。
デイト窓の枠については94xx系の初期と791xx系の前期にあったようで、黒ダイアルには白で、シルバーダイアルには黒で枠が書かれていました。
また随分と駆け足での紹介となってしまいました。文字だけで追いかけて行くのは非常に困難だと思いますので年表のようなものを作っておきました。各パーツごとの変遷を目で見て追えると思います。尚年表は別窓で開く設定にしておりますが、スマホなどでは見づらいと思いますので是非PCなどでみてくださいね。
最後に今回の編集にあたりskywave氏の多大なるご協力を頂きました。氏の希望もあり、ダイアルなどの種類についても記載したかったのですが、どうしても画像が入手できず作製できませんでした。また資料などが集まれば特集として記事にしたいと思いますので、そのときはまたご協力をお願い致します。
関連ページ
●チュードル クロノグラフの歴史
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