チュードル クロノグラフの歴史

ロレックスのディフュージョンラインとして登場したチュードルですが、品格や伝統に捕らわれずに面白いモデルが多い事が特徴といえます。『ロレックスを買えない人が仕方なく買うブランド』などと揶揄された時期もありましたが、自社ムーブの開発にも成功し、今後も独自の色を出しながら面白いモデルを輩出してくれると期待しています。

ここではチュードルのクロノグラフの歴史について簡単にまとめておきたいと思います。具体的には初代クロノグラフからクロノタイムまでに特化してまとめておきますね。


第1世代 クロノグラフ誕生 Ref.70xx系

チュードル初のクロノグラフはオイスターデイトと名付けられました。このモデルはカム式のクロノグラフ機構を採用したバルジューCal.7734を搭載して1970年に登場したわけですが、当時の他モデルと比べても39mmのケースサイズはかなり大きかったようです。五角形のインデックスと随所に使われているオレンジが独創的です。この特徴的なダイアルはホームベースダイアルと呼ばれていて一部には熱狂的な方もおられるとか。

6時位置のサイクロップレンズ付きデイト表示と2レジスターのクロノグラフを搭載しています。プッシャー、リューズともにねじ込み式を採用。

バリエーションは、ベゼルがプラスチック(ベイクライト)製なのがRef.7031/0、ステンレス製ベゼルがRef.7032/0、回転ベゼルがRef.7033/0です。外装パーツはロレックス製を使用していますので王冠マークが刻まれています。製造期間も1年とかなり短いので市場に出回っているタマ数も少なく、かなり高額で取引されているようです。近年このモデルがヘリテージとして復刻しまして、時計ファンの話題と人気をさらったのも記憶に新しいところですね。


第2世代 ムーブメント変更 Ref.71xx系

チュードル初のクロノグラフからわずか1年でモデルチェンジが行われました。外観的にはホームベースダイアルからバーインデックスに変更され、ダイアルメモリ部分とその色合いがカジノのルーレットに似ていることから※1、モナコ公国の一都市になぞらえてモンテカルロと呼ばれるようになりました。

※1 諸説ありますが、ここはチュードル公式を参考にしました。

さらに搭載ムーブメントも変更になりまして、バルジューCal.7734から同社の名機Cal.234へと変更されました。Cal.7734が18,000振動だったのに比べ、21,600振動のCal.234を導入したおかげで精度が格段に上がったとチュードルは説明しています。また、クラッチとコラムホイールを搭載していることも導入の理由になったようですが、コストは確実に上がったものと思われます。

バリエーションはブラスチックベゼルのRef.7149/0、ステンレスベゼルのRef.7159/0、回転ベゼル付のRef.7169/0の3種。ダイアルはグレーと青の2種類だったようです。


第3世代 手巻きから自動巻きへ Ref.94xx系 〜 Ref.791xx系

1976年、バルジューは手巻き式から自動巻ムーブメントへと舵を切り、手巻きムーブメントを生産中止としました。同年、チュードルは初の自動巻クロノグラフを発表することになります。”クロノタイム”というペットネームを付けられ、3カウンタークロノグラフとして生まれ変わりました。

非常に厚みのあるバルジューCal.7750をそのまま搭載したことで厚みのあるケースになりました。これが通称”カマボコケース”、海外では”BIG BLOCK”と呼ばれているものですね。

この初代クロノタイムのバリエーションはプラスチックベゼルのRef.9420/0、ステンレスベゼルのRef.9430/0、回転ベゼルのRef.9421/0の3種類でした。ダイアルはホワイトと黒のみ?のようで、一部マニアはこのダイアルをエキゾチックダイアルと呼んでいるようです。

また、1978年には前モデルを彷彿させる色合いのダイアルが追加されており、こちらもやはり外周の目盛りがカジノのルーレットに似ていることからモンテカルロと呼ばれています。ダイアルカラーは黒・グレー・青があり、青ダイアルには青のプラスチックベゼルが合わせられます。またこのダイアルには”OYSTER DATE”の表記がなく、6時のインダイアルに沿って”AUTOMATIC CHRONO TIME”と表記されているのが特徴的です。また、初期のダイアルはデイト表示の周りが白い枠で囲まれています。

マイナーチェンジ
そして1980年代の終わりごろにマイナーチェンジがあります。外観的に大きな変更点はありませんがチョコチョコと変更されています。まずこの時にREF番の5桁化が行われました。今まで通りの表記方法であれば791x/0となるところですが、スラッシュを廃止して末尾のケース素材を表す数字と合わせて5桁のREF番に移行しました。

さらにモンテカルロと言われるダイアルの廃止、これに伴い青のプラスチックベゼルも廃止されました。コレは個人的な印象ですが、チュードルらしさがなくなりロレックスに近い印象に変わってしまいました。これにより『デイトナを買えないからクロノタイムを』という考え方が強まってしまったと思っています。

内部的な変更としてはローターの肉抜きが廃止されました。基本的にローターは重い程巻き上げ効率が上がりますから、その辺を考慮しての変更でしょうか。また外装パーツですがロレックスからの供給を示す王冠マークがリューズ、クラスプ、裏蓋に入っています。しかしながらこのモデルを最後にこれらのパーツから王冠マークが消えてチュードルの盾マークに変更されてしまいます。最後の王冠マークモデルと言えますね。

バリエーションはプラスチックベゼルのREF.79160、ステンレスベゼルのRef.79180、回転ベゼルのRef.79170の3種類です。


第4世代 更なるモディファイと消えた王冠マーク Ref.792xx系

長期間に渡ってカマボコケースを作ってきたチュードルですが、ここで外観に関して方針を変えたようです。1995年、無骨なカマボコケースから本家のロレックスデイトナにも似た美しい丸みを帯びた形状に変更されました。

さらにシルバー基調にクリーム色のインダイアルを備えたダイアルが追加されました。従来のプラスチックベゼルのモデルで採用されていたベゼルインサートもその素材をアルミ製へ変更されています。風防に関しても今まで採用していたプラスチック(プレキシガラス)からサファイアクリスタルへと変更されました。他にはレザーストラップ+Dバックルの設定も新しく追加されています。

バリエーションは、アルミベゼルのRef.79260、ステンレスベゼルのRef.79280、回転ベゼルのRef.79270の3つです。

消えた王冠マーク
もう一つ大きな変更点として外装パーツに刻印されていた王冠マークがチュードルの盾マークに変わってしまいました。これはクロノタイムのモデルチェンジと同時ではなく、モデルチェンジ後しばらくしてから変更されたようです。王冠マークがあったのはリューズ、クラスプ、裏蓋です。裏蓋の刻印についても”ORIGINAL OYSTER CASE BY ROLEX GENEVA”から”TUDOR PRINCE GENEVA”へと変更されています。リューズももちろん盾マークに変更されました。前モデルまでのクラスプはロレックスの王冠マークが刻印されていましたが、このマーク変更を受けてチュードルマークが入ったクラスプに変更されました。

792xxPへマイナーチェンジ
さらにその後程なくして今までずっと3連だったブレスレットが5連に変更されました。他にもラグ部分がポリッシュ仕上げに変更されるなど細かな変化が見られます。この時の変更により、REF番の末尾にP(例:REF.79260P)が付けられました。

プロゴルファータイガー・ウッズとのコラボ
1998年、チュードルが有名プロゴルファーであるタイガー・ウッズの公式スポンサーになったことからクロノタイムに限定ダイアルとしてコラボレーションを果たしました。具体的な仕様の違いとしては12時のインダイアル下部に”TIGER”と書かれているだけなのですが、このタイガーウッズとのコラボはクロノタイムだけではなくハイドロノートなどでも登場していて、当時はかなりの人気だったと聞いています。

カラフルなダイアルが数多く登場したこともありかなり売れたようですが、タイガーウッズ氏のスキャンダル騒動や、タマ数が多いためレア要素も乏しく、今では不人気モデルとなっています。余談ですが、日本ロレックスはこのタイガーダイアルを限定と捉えていますので、ノンタイガーダイアルへの変更を行った際でもタイガーダイアルの返却は行わないそうです。

クロノタイム最初で最後のコンビモデル
この時期のクロノタイムにはコンビモデルが存在します。プラベゼルと回転ベゼルのみ存在するようです。プラベゼルはインサートが黒からゴールドへ、回転ベゼルもインサートがゴールドになっています。ダイアルはタイガーとノンタイガー両方確認できています。ブレス仕様は存在せず、レザーストラップ+Dバックル設定のみだったようです。タキベゼル仕様がREF.79263Pで、回転ベゼル仕様がREF.79273Pです。どちらも生産された数が極端に少ないのですが、あまり人気はないようです。


ココまで駆け足ですが初代クロノグラフからクロノタイムの終わりまでをまとめてみました。この特集はチュードル公式の発表を参考にしています。特定の事象に対して様々なご意見がある場合もあると思いますが、あくまでも公式発表をベースとした私なりの解釈として書いています。クロノタイムに関してはまた別に機会に特集したいと思います。尚、この記事を作成するに当たりskywave氏に多大なるお力添えを賜りました。記事上からで恐縮でありますが厚く御礼申し上げます。

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